いなか
おばあちゃんに会いに、新潟へ。
晴れていれば佐渡島が見える、日本海に面した小さな村です。
おばあちゃんはそこで、つい最近まで、
小さな民宿の女将さんをしていました。
海の見える民宿「さかえや」は、
毎年夏になると、沢山の海水浴客でにぎわっていました
毎年の夏休みには、民宿の一階にあるおばあちゃんの部屋に泊まり
一日中泳いだり、磯でヤドカリをとったりしました。
だから、僕の夏休みの思い出は、潮とスイカと蚊取り線香の匂いとともに、
おばあちゃんの民宿にあります。
夏休みには当たり前のようにどっぷり海につかっていた自分を
今となっては、なんと幸せなやつだろうと思いますが、
そういう豊かさを思いっきり消費できるところが、
子供ということなのかもしれません。
そして、20年前と何もかわらない風景を眺めながら、
ノスタルジックな想いを感じているところが、
歳をとってしまった証拠なのでしょう。
でも、引っ越しばかりだった僕にとって、
「いなか」というよりどころがあったのは、とても幸せなことでした。
こういうよりどころがあったからこそ、ちょっと無理をしてでも、
外に出て行こうという気持ちになったのかもしれません
今年91歳になるおばあちゃんは、
おじさんが民宿を半分壊して造ったデイケアセンターで日中を過ごし、
よるは、これまでずっとそうしてきたように、民宿の一階で寝ています。
おばあちゃん、どうか長生きしてください。